甲賀三郎・小説感想リスト昭和十八年

朔風

真珠湾攻撃の日から始まる作品。身元不明の外国人女性が謎の死を遂げているという出だしは探偵小説の入りとしてとても素晴らしいものだ。
その女性の身元が全く不明であり、そこに怪しい男女が絡んでくる。
不可思議な殺人事件が続く中、ふたりの探偵役が暗躍するスパイと目される犯人を追う展開は、良く言えば贅沢なごった煮、悪く言えば、 まとまりがないといった案配。それでも最後は収束し、本作の発表舞台でもあった北方へ。
樺太の日ソ国境付近が描かれるのは珍しいのも手伝って興味深いが、その最中の本作最大のトリックはリアルタイムで読んでいた読者の驚きは想像を絶するものだったものだったのではなかろうか。
私的相対評価=☆☆☆☆