甲賀三郎・小説感想リスト 大正十四年

母の秘密

今までの甲賀三郎とは怪しげな雰囲気漂う作風で書かれた本格。タイトルでもある母の秘密に関することである恐ろしい悪巧みがなされ・・・・・・、というお話だ。医者の書生として木村清が初登場する点でも見逃せない。古くささは思いっきり感じる点は多々あるのが現在に於ける欠点であろうか。さて、小間使いの気絶事件に端を発したこの事件、幻の女は潜在意識の見せる女だというのか、秘密の果てにある感激とは!?
私的相対評価=☆☆

大下君の推理

探偵が大下君を向かいの家の窃盗罪の疑いで調査しに来た。それに対し大下君は容易に反証のための推理を披露していくのだが・・・・・・、ラストの錯誤も見物であろう。
私的相対評価=☆☆☆

大下君の武勇伝

つまらぬユーモア物に過ぎない。大下君が謡ってると、突然因縁をつけられ、武勇伝を演じた。そしてその後、暫くすると時計の調子が悪くなった謎というものだ。しかし根本からして因縁をつけた側の最大動機がナンセンスであるし、時計についてもあまりに偶然に頼りすぎている。そもそも警官だって、ど田舎であるまいし、通りがかりの人だって時計ぐらい持っているだろう。やっぱり根本がナンセンスだ。まさかそこまでユーモアを狙っているわけではあるまい・・・。
私的相対評価=☆

誘惑

かなり強引な展開であるが、意外な所が中盤と終盤に二度もあり、「誘惑」という表題の付け方も絶妙であると思われた。
私的相対評価=☆☆

空家の怪

元検事に上手い具合に家を安く買い取られてしまった。老人の法の無知が無さしめた悲劇である。しかしその騙されて取られた家を取り返したというのに、主人公も協力。殺人事件の現場、幽霊の話など子供騙しにも見える評判を立ててみるが、その効果は!? 弁護士の密かな活躍が少し面白く、主人公と同じく私も少なからずドキリとしたものである。が、これは現在では犯罪だろうな、とは思う。
私的相対評価=☆☆