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漫談漫語

甲賀三郎
  

◆田中早苗老、探偵趣味誌に江戸川君から探偵作家に註文はと聞かれて答えて曰く、芸術作家なら名前に囚われずにもっと真剣に「人生」を描け、大衆読物作家ならもっとうまい芸の味を見せて呉れと云う。聞くもの名言に服す。而も早苗老未嘗て探偵作家の創作を読みたる事なし。可愛き男哉、彼老に云われて黙って居ない事三郎夙より承知なり。
◆刷毛序に本誌主筆森下雨村老、後備役の演習に寝耳に水で呼び出され、四国まで下向して、大正元年兵と云うので頗る大切にせられたる由、三週間目にもう一週間いる曹長にしてやると云われて吃驚仰天す。探偵小説通の彼を最後にあっと云わせたのはビーストン以上と云うべし。兵隊も中々味をやる。
◆もう一つ。江戸川乱歩君を評して、一作毎に頭の毛の抜けるような事を考える男と云った者あり。そうなると今後乱歩君も余り多作出来ず。若年寄組なればなり。無論拙者もその組に這入って差支えなし。


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特になし。