甲賀三郎・小説感想リスト昭和十九年

瓜哇から来た女

瓜哇は現在のインドネシアのジャワのこと。掲載誌の「満洲良男」は満州国で発行された雑誌であり、関東軍機関紙であった。 本作には防諜小説の冠があるものの、内容としては、作者の分身とも言える探偵小説家の高笠武郎が主役を務める探偵小説である。
高笠武郎の友人の友人の原田欽三は、ポルトガル船籍の沈み掛かったボロ船を二千円で購入した。 一万円で売りたがっている船長相手に値切った格好であった。その船に中国人とスペイン人の女が絡んできて事件ができあがっていく。 中国人が探りを入れている所から、高笠達が逆に調査をしたところ、蜘蛛の死体と共に鉄の箱があり、その中には素晴らしい真珠が隠されていたのだ。 そしてそこにはスペイン女に関連した謎の暗号文が。
ジャワから来た女が絡んだり他の外国人が絡んだり秘密書類が絡んだりして防諜小説風を見せているが、異国を舞台にしサスペンスも含みつつ、 推理によって表面に現れた騙しの論理を含んだ欺瞞から真実を見破る高笠の慧眼が合わさった探偵小説と言っていい作品となっている。

私的相対評価=☆☆☆☆