第一話・東方社収録の書籍の謎第二話 甲賀小説あれこれ第三話 怪弁護士・手塚龍太に迫る/続・第三話 手塚龍太氏へ特別インタビュー(予定)/第四話 名探偵・木村清の横顔!? /第五話 怪盗・葛城春雄の謎(予定)/第六話 第一号・橋本敏とは!?/第七話 気早の惣太とは!? /第八話 探偵小説講話を見よ! /第九話 「劉夫人の腕環」(長隆舎書房刊行)の不思議/第十話 獅子内俊次の研究/番外一話 次女の処女作「愛国者」・・・・・・・予定ばかりです。


私の甲賀三郎・雑記録1

第一話 東方社の収録書籍の謎

 私のような若輩かつ、絶対的に甲賀三郎の創作をまだまだ読み足りていないものが、偉そうに書くような資格もないだろうが、その己の力を遙かに超えた暴挙の誹りは「甲賀三郎の世界」を創った時点からあるものであるので、この際、その辺のことはご勘弁頂くほかはない。当然、この下に触れている作品は多く未読だし、作品集に至ってはほとんど未見である。ということで、全く証拠はない、所謂単なる推理に劣る推論である、ということを一応ながら先に記しておく。

 で、今回気が付いたことを、記していくが、それは小説・作品リストを眺めた時に気が付いたことである。あまりにも単行本未収録が多い。そしてそれは戦後の著作集にも未収録のままなのである。これは「黒い虹」など連作作品や戦後発表された「海のない湊」を除く全作品であり、これが表すものは、ただ一つ、昭和二十二年から翌二十三年の湊書房の全集や昭和三十年代前半の東方社の著作集を含め、ほとんど初出誌からの新発見、ピックアップがなかったことを意味している。ではその少し実体を考察してみよう。まずその東方社の著作集に収録された作品群である。
 すると、意外なことが判明する。ほとんどが湊書房の全集の収録作品と同じなのだ。私が現在調査した中ですら、甲賀作品は300を超える。そして東方社・著作集の収録作品は71作品、湊書房・全集の収録作品は50作品、これが普通に編者がお気に入り作品を選んだならば、九割以上重なるわけがない。つまり私が思うまでもなく、東方社は湊書房・全集をベースに作品を選んだのは明かである。ちなみに湊書房全集にあって、東方社から洩れたものは、たった四作だけであり、つまりその洩れた「急行十三時間」「魔の池事件」「荒野」「月魔将軍」以外の47作品は東方社に収録されたことになる。しかも「魔の池事件」のパフォーマンスを考えると、なぜ洩れたのかも理解不能としか言えない。
 それと、東方社の残り24作品も、まともな選ばれ方をしているかが、疑わしい面がある。つまり下記9冊の作品集からだけ選び出している節が強いである。


新潮社・長篇文庫「電話を掛ける女」(1930)
「電話を掛ける女」「地獄禍」

ぷろふいる社「血液型殺人事件」(1935)
「菰田村事件」「日の射さない家」「発声フィルム」「蜘蛛」「血液型殺人事件」

春陽堂・日本小説文庫405「血染の紙入」(1936)
「浮ぶ魔島」「隠れた手」「血染の紙入」

春陽堂・日本小説文庫426「N2号館の殺人」(1937)
「N2号館の殺人」「操る魔手」

熊谷書房「羅馬の酒器」(1942)
「赤い壜」「羅馬の酒器」

一号館書房「虞美人の涙」(1946)
「虞美人の涙」

美和書房「血染の裸女」(1947)
「二度死んだ男」「一本のマッチ」「臨終の告白」「血染の裸女」

東書房「山荘の殺人事件」(1947)
「山荘の殺人事件」「屍体の恐怖」

松竹株式会社出版部「盲目の目撃者」(1947)
「原稿料の袋」「鍵なくして開くべし」「盲目の目撃者」


 このうち、なんと、ぷろふいる社「血液型殺人事件」(1935)、春陽堂・日本小説文庫405「血染の紙入」(1936)、春陽堂・日本小説文庫426「N2号館の殺人」(1937)、一号館書房「虞美人の涙」(1946)、美和書房「血染の裸女」(1947)、東書房「山荘の殺人事件」(1947)、松竹株式会社出版部「盲目の目撃者」(1947)の7冊までは全部収録なのである。これはただの偶然であり得ない。
 なお、湊書房・全集未収録分も合わせると、新潮社・長篇文庫「電話を掛ける女」(1930)には他に「消える宝石」「鸚鵡の籠」があり、熊谷書房「羅馬の酒器」(1942の残りは多く、「殺人と白猫」「富江と三人の男」「森の悲劇」「泥棒と狂人」「開いていた窓」「果樹園物語」とある。ゆえに新潮社・長篇文庫「電話を掛ける女」(1930)収録の「電話を掛ける女」「地獄禍」はともかく、熊谷書房「羅馬の酒器」(1942)収録の「赤い壜」「羅馬の酒器」については、あるいはこの書籍でなく初出から採った可能性も否定できない。また 一号館書房「虞美人の涙」(1946)は表題作のみなので、これも初出から採ってる可能性もありそうだ。
 しかし結論を言うと、東方社の著作集は、九割五分以上は、上記に触れた著作集からのみ採ってる可能性が高いと判断して良いかと思う。最初に言ったように東方社・書籍は未見なので、あくまで推理だが、底本も初出ではなく、上記に触れた著作集のような気がするのである。この選び方の著しい偏りの弊害が、乱歩の評論で触れられた「水晶の角玉」などのように戦後未収録作や単行本未収録作が多くなっている原因だと思うのだ。もっとも今となっては、国書刊行会、春陽堂、東京創元社に収録されている作品以外は全て幻には変わりないのだろうが・・・・・・。

(初稿:2001/6/24)


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