第一話・東方社収録の書籍の謎/第二話 甲賀小説あれこれ/第三話 怪弁護士・手塚龍太に迫る/続・第三話 手塚龍太氏へ特別インタビュー(予定)/第四話 名探偵・木村清の横顔!? /第五話 怪盗・葛城春雄の謎(予定)/第六話 第一号・橋本敏とは!?/第七話 気早の惣太とは!? /第八話 探偵小説講話を見よ! /第九話 「劉夫人の腕環」(長隆舎書房刊行)の不思議/第十話 獅子内俊次の研究/第十一話 暗黒紳士武井勇夫の紹介/番外一話 次女の処女作「愛国者」・・・・・・・予定ばかりです。
私の甲賀三郎・雑記録 番外1
番外一話 次女の処女作「愛国者」
2004年10月、歴史に大きな1ページを刻んだ。東洋出版から「愛国者」と言う本が登場したのだ。作者は、なんと深草淑子。どこが驚くべき所かというと、なんと彼女は我等が甲賀三郎の真の次女であり、そして、更になんと79歳にしての処女作なのだ。これを《なんと》と言わずしてどこでどう驚けばよいやらわからぬくらいの、まさに驚天動地の贈り物だ。
内容はその大仰なタイトルに対しては比較的普通(?)というべきか。むしろ私的には序盤が多少苦しかったものの、その後は楽しんで読み進めることが出来た。そもそも大源になるネタ、架空の異国の扱いとトリックどれも巧く処理できているではないか。
ただ現在が舞台で、主人公が二十代中後半という苦しい設定のため、主人公など若者キャラや携帯などの現在文化に対しては、主役と同世代の目から見ると、多少ズレた所もあるかもしれぬなという結果になってしまった。もちろんその努力こそは凄いとしかいいようがない所で、愛すべき突っ込みにすぎないところは書き逃すわけにはいかない。
話は恋人とちょっとした微笑ましいいざこざがあって、しばらく離れて生活したくなった主役の栽子が何を思ったのか、いかにも怪奇的経緯でバイト先として、長崎の離れ小島に、マイナー王国の王位継承者の家庭教師をすることになったところから動き出す。この発端では最初の家庭教師先の説明口調の所はちょっと苦しく本篇最大の難点かも知れない。その後、その家庭教師先の王国の関係者たちが謎の死が遂げていく。そして殺人事件の嫌疑までに発展。
推理小説のテーマとしては良い所をついたとは思う。が、そのテーマと主役たちとの関わりも多少取って付けた感もあるので、このあたりは序盤に納得いく説明を付加できれば良かったと思われる。いずれにせよ全体のバランスに比して、序盤の雑さが目立つため、架空の外国人登場人物や中年などの性格づけは良いとしても、主要な日本人登場人物の性格付けが今一つ粗雑になって、感情移入しにくくなってしまった点が勿体ない所だと思われる。
さいごに個人的な思いだが、せっかく甲賀三郎の名前を帯に記したのだから、それなりのサービス精神があっても良かったのではなかったのかと思う。ちょい役に期待した手塚龍太や葛城春雄や獅子内俊次らが顔を出すことがなかったのは残念至極だ。むろん舞台を現在に取っている以上は無理難題、仕方のないことなのかも知れないが、やはり多少残念に思えた。もちろんこの本の存在そのものがサービス精神だと言うことは重々承知はしているのは特筆せねばならないのは言うまでもないこと。だが、やはりファンというものは尽きることなく贅沢なもんなのだ・・・。
失礼な文章を書き散らしながらも、次回作にも期待します。掲示板NO[167] ([169])には多謝。
(元稿:2004/11/1(「乱歩の世界」の読書記録) 改稿:2004/12/16
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